航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


元カレである悠翔との出会いは三年前。

―――

――




「わっ、落ちる……!」


会社からの帰宅途中、駅の改札へと続く階段を急いで駆け上っていたときのことだ。

ふと足を滑らせてしまった私はうしろに体が傾き、そのまま階段から転げ落ちていくはずだった。


「大丈夫ですか」


けれど、たまたますぐうしろを歩いていた男性が私の体を受け止めてくれた。

そのおかげで階段から転げ落ちたのは、足を滑らせたことに驚きとっさに手を離してしまった私のバッグだけ。

私は間一髪のところで見ず知らずの男性に助けられた。


「すみません。ありがとうございます」


頭を下げてお礼を伝える。

それから階段の一番下まで落ちて中身が散乱しているバッグを慌てて取りにいこうとした。

けれど、男性によって止められる。


「自分が取ってくるんで、ここで待っていてください」


男性は颯爽と階段を駆け下りて、散乱している中身をバッグに戻してから階段を駆け上ってきた。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


男性からバッグを受け取った私は再び頭を下げた。

顔を上げた私に男性が尋ねてくる。



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