再会した航空自衛官の、5年越しの溺愛包囲が甘すぎます!
「……なにあれ」
人混みに消えていく愛梨さんの背中を見つめながら、もやもやとした気持ちが込み上げてくる。
私では悠翔と付き合う資格がないと言いたいのだろう。
自分の方が悠翔のパートナーに相応しい。だから別れろと言われて、はいわかりました、なんて言うとでも思ったのだろうか。
こんなことをしたところで私が悠翔と別れるはずないのに。
もやもやは消えないけれど、この件については忘れようと思った。
でも、なかなか気持ちを切り替えられないまま、明日香と筧さんのところに戻る。
ふたりは短時間ですっかり打ち解けたようでまだ話し足りないといった様子だったが、筧さんがそろそろ持ち場に戻らないといけないようで慌てて走っていった。
明日香も筧さんを気に入ったらしく、連絡先を聞けばよかったと残念そうにしていたので、今度悠翔に筧さんの連絡先を教えてもらい、明日香に教えると約束をした。
結局、私はその日、悠翔には会えず航空祭の会場をあとにした。
数日後、悠翔と会う約束をしていたが愛梨さんのことは聞かなかった。
彼は上官からの結婚の話を断ったそうだから、あえて私から口にする必要はないと思ったし、なにより愛梨さんの話題を出したくなかった。
それから半年が経った頃。
悠翔に内示が出て、他県にある航空基地への異動が決まった。