再会した航空自衛官の、5年越しの溺愛包囲が甘すぎます!
「美羽。結婚しないか」
プロポーズをされたのは異動の話をされたあとのことだ。
嬉しい気持ちが込み上げて、でも、次第に現実を思い出す。
悠翔と結婚するということは私もここ――地元を離れて彼についていくということだ。
それだけはどうしてもできない。
私には地元を離れられない理由があるから……。
それを知っている悠翔は、籍だけを入れて住むところは違う別居婚を提案してきた。
「離れていてもいいから俺は美羽と結婚したい」
彼の思いを知り、心が揺れる。
悠翔と結婚したくないわけじゃない。結婚したいけど、私は彼の転勤についていくことができない。
でも、別居婚でいいのなら……。
そのときふと航空祭のときに言われた愛梨さんの言葉を思い出す。
『秋村さんが心置きなく仕事に集中できるような環境を妻として作ることができる。彼をそばで支えられるのはあなたではなくて私です』
どうしてこんなときに思い出すのだろう。
いや、思い出したのではなくて、あの日からずっと私の心の中に彼女の言葉が残り、引っ掛かっていたからだ。
どうしても地元を離れられない理由があり、なによりも悠翔を優先できない私には彼と結婚をする資格がない。
私では悠翔を支えられない。
彼にはもっと相応しい女性がいるはずだ。
たとえば、愛梨さんとか……。
「ごめん、悠翔とは結婚できない。私たち別れよう」
こうして私と悠翔は約二年の交際に幕を下ろした――。