航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
駅からは別々の道だ。
話し掛けるなら今しかないと思った俺は、美羽に向かって声を掛けようとした。
そのとき、俺よりも先に美羽に話し掛ける人物が現れる。
「姉ちゃーん」
手を振りながら、こちらに向かって走ってきたのは制服を着た男子高校生だ。
「同じ電車だったんだ。一緒に帰ろ……えぇっ⁉」
男子高校生の視線が美羽の近くに立つ俺に向けられる。そして、大きく目を見開いた。
「えっ、うそ⁉ もしかして悠翔さん? どうしてここにいるの?」
俺を見た男子高校生が取り乱しながら美羽の上着の袖を勢いよく掴んだ。
「姉ちゃん姉ちゃん! どうして? どうして悠翔さんが?」
「落ち着いてよ羽琉。あと服伸びるから引っ張らないで」
ぴしゃりと美羽に言われて男子高校生――羽琉は彼女の服から手を離した。その視線は俺をじーっと見つめている。
話し掛けていいのか、いけないのかを悩んでいるような表情だ。
美羽は羽琉に俺たちのことをどう伝えているのだろう。
気まずそうな羽琉の表情を見る限りでは、別れたことは伝えているのかもしれない。
そんな羽琉に美羽が言う。