航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


「子供の頃からの夢を叶えちゃうんだから、悠翔はすごいね。この前亮二さんも言ってたけど、全国の飛行機部隊から選ばれた精鋭揃いの部隊なんだよね」

「まぁ、それなりの努力はしたからな」


憧れの部隊に配属されたことで満足して終わりじゃない。ここからが始まりだと思っている。


「訓練とかつらくないの?」

「いや、つらくはないよ。苦労はあるけど、憧れの部隊に配属されて、飛行技術を学べることが今は楽しいから」

「そういう考え方がかっこいいんだよね、悠翔は」


テーブルに置かれたカップを手に取った美羽がコーヒーを一口含む。それから深いため息を落とした。


「私はダメダメだよ。会社潰れて無職になるし、なかなか新しい仕事も見つからないし」

「でも、今も変わらず羽琉の親代わりをしているんだろ。頑張ってるよ、美羽だって」


言葉を交わすうちに気まずい雰囲気がいつの間にか消えていたせいだろうか。

付き合っていた頃と同じように美羽に手を伸ばして、彼女の頭をぽんぽんと撫でてしまった。

美羽が硬直しているのがわかり、「ごめん」と謝ってすぐに手を離した。

一度は和らいだはずが再び気まずい空気が流れ始める。


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