再会した航空自衛官の、5年越しの溺愛包囲が甘すぎます!
当時も今も、私には悠翔よりも優先するほど大事な存在がある。
弟の羽琉だ。
羽琉が大人になるまで私が必ずそばにいる――と、母が亡くなったときに決めたから。
当時の私は十八歳。高校三年生の夏で、地元を離れて東京の大学への進学を希望していた。
でも、それを諦めて進学先を自宅からも通える短大に決めた。就職先も同じだ。
まだ六歳という幼さで母親を失くし、父親も仕事で忙しくなかなか家に帰ってこられない。そんな羽琉の親代わりをずっと続けてきた。
でも、もしも悠翔と結婚すれば私は彼の転勤に一緒についていくことになる。
私の事情を知っている悠翔は別居婚を提案してくれた。それに、羽琉のことを弟のようにかわいがってくれていた彼なので、私と結婚して家族になった方が今よりももっと私たち姉弟をサポートできるとも考えたらしい。
だけど、それでは私ばかりが支えてもらうことなり、悠翔には迷惑をかけるだけになる。
なにより彼はとても大切で、多忙な仕事をしているのだからそばで支えてくれる奥さんの存在が必要なはずだ。
プロポーズをされたとき、私では悠翔の妻になる資格がないと、航空祭のときに言われた愛梨さんの言葉を思い出して別れを選んだ。
でも、私はあれから一度も悠翔を忘れたことがない。
今でも好きだ。
再会して改めてその気持ちに気付いてしまった。
だけど悠翔にはもう特別な女性がいるのかもしれない……。