航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


「美羽も待ってて。あとで飲み物と食事を持っていくから」


明日香が店内の奥へと走っていく。

会社員の彼女は休日だけ実家のカフェを手伝っているので、お昼時の今は忙しいのかもしれない。

それでも少しの時間をもらって、このあとは一緒にランチをする予定だ。

中庭に通じる扉を開けて外に出る。日差しはあるが、時折吹く風はまだ冷たく肌寒さを感じる。


「あ、美羽ちゃん。やっと来た」

「遅れてごめんなさい」


私を見てにっこりと笑った亮二さんとは対面のイスに腰を下ろす。

彼の隣はあとから来る明日香が座るはずだ。


「遅いからもう来ないと思ったよー。腹減ったから先に食べてるけどごめんね」


ぱくぱくと食事を続ける彼――(かけい)亮二さんは明日香の彼氏だ。

私たちよりも四歳上の三十二歳。

身長は明日香よりも少し高いくらいで、がっしりとした体格をしている。明るく陽気な性格の持ち主で、場を盛り上げるのが得意な人だ。

営業職が向いていそうだけど、亮二さんは技術職。この地域にある航空自衛隊の基地に勤務している自衛官で、航空機の整備を担当している。


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