航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


「りこっ! よかった」


りこちゃんの母親らしき女性が駆け寄ってきて、りこちゃんをぎゅっと抱き締める。

そのうしろからは父親らしき男性も来て、りこちゃんを見てほっと胸を撫で下ろしていた。


「本当にありがとうございました」


りこちゃんの両親はスタッフと、それから私に深く頭を下げた。


「おねえちゃんバイバーイ」

「バイバイ」


母親と手を繋いで歩きながら、振り向いて私に手を振るりこちゃんに私も手を振り返す。

無事に両親と再会できたりこちゃんはスタッフ用のテントをあとにした。

私もここを離れて、とりあえず羽琉と合流することにする。

会場内を歩きながら自然とため息がこぼれた。

展示飛行が見られなかった。あんなに楽しみにしてたのに……。

でも、羽琉が撮ってくれている動画がある。直接は見られなかったけれど、動画でもいいから見られればもうそれでいい。

羽琉と合流しようと思い、スマートフォンに電話をかけるも繋がらない。

気づいていないのだろうか。


「あ、姉ちゃん」


しばらく歩きまわって、ようやく羽琉に会えた。

すると突然、羽琉が顔の前でパチンと両手を合わせて謝罪をするときのようなポーズになる。


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