航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました


「それが、迷子の女の子を見つけてスタッフテントまで連れて行ったんだけど、両親が迎えに来るのを私も一緒に待つことになって。テントの中にいたから展示飛行がよく見えなかったんだよね」


思い出しても落ち込んでしまう。

でも、りこちゃんが無事に両親に再会できたのはよかったので自分の行動に後悔はない。


「そっか。迷子の子を保護するなんて美羽らしいな」


悠翔がくすっと笑う。


「八月に基地の航空祭があるんだ。そのときにも飛ぶ予定だから、よかったら見に来て」

「えっ、そうなの⁉ 見に行きたい」


悠翔の操縦する機体が飛ぶのを見られるチャンスがまだあるのだとわかってテンションがぐっと上がる。

でも、その頃にはもう私は悠翔の仮の婚約者の役目を終えて、私たちの関係は元通り。

こうして会うことももうなくなるのだと思うと、胸がぎゅっと切なくなる。

今度の展示飛行がいい機会なのかもしれない。

それを見て、悠翔への想いをきっぱりと断ち切ろう。

私のせいで別れてからもずるずると想い続けてきたけれど、もう終わりにしないといけない。

そんなことを思いながらしばらくして食事会場のホテルに到着した。

駐車場に車を停めてエントランスに向かう。


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