再会した航空自衛官の、5年越しの溺愛包囲が甘すぎます!
「さぁ、食事を始めましょう」
お母さんがぱんと両手をたたいた。
無事に悠翔の婚約者だと認めてもらえたタイミングで、スタッフが食事を運んでくる。事前にコース料理を注文してあったらしい。
前菜から始まり、食べたことがないような繊細の味の料理が続く。肩の荷が下り、緊張も和らいだので美味しく食べることができた。
でも、少しだけ胸が痛むのは悠翔のお母さんを騙しているからだ。
彼女は悠翔が本当に結婚するのだと信じて、ご機嫌に食事を口に運んでいる。
けれど私たちは偽物の婚約者。結婚なんてしないのだ。
婚約者役を頼まれたとき、悠翔のお母さんの前で嘘をつくことになるのは理解していた。それが今になって罪悪感でいっぱいになってしまう。
本当にこれでよかったのだろうか……。
「そうだわ。悠翔、昨日の見たわよ」
悠翔のお母さんがふと口を開く。
昨日のとは、お祭りで披露した展示飛行のことだろう。もともとお母さんはそれを見るために東京から来たのだから。
「どうだった?」
食べる手を止めた悠翔が尋ねる。
「迫力があってすごかったわ。涙が出そうになった」
空での圧巻のパフォーマンスを見て、きっとお母さんは涙が出そうになるくらい感動したのだろう。
私も見たかったなぁ……。