航空自衛官の元カレの偽装婚約者になりました
明日香をじっと見つめていると、彼女がピンと人差し指をたてた。
「ちなみにもうひとつ質問。美羽はあれから誰とも付き合ってないけど、それってどうして?」
「どうしてって……」
ふと、ある人の顔が頭に浮かぶ。
三年前に別れた元カレを思い出して、胸がきゅっと締め付けられるように苦しくなった。
自然と俯いてしまっていた顔を持ち上げて、コーヒーカップを手に取る。
「別に、理由なんてないよ。ただ出会いがなかっただけ」
とっさに嘘をついた。
本当は別れた元カレを引きずっている。でもそれを明日香には知られたくなかった。
この話題はもう終わりにしたくて、少し冷めたコーヒーに口をつける。そのとき、「お待たせ~」と亮二さんの声がテラス席のある中庭に響いた。
遅れているもうひとりを連れて戻ってきたようだ。何気なくそちらに顔を向けた瞬間、ぴたりと体が固まる。
亮二さんの隣にいるのは、すらりと背が高く、服の上からでもわかるほど逞しい体つきの黒髪短髪の男性。
その人物を見て、私は勢いよくイスから立ち上がった。