再会した航空自衛官の、5年越しの溺愛包囲が甘すぎます!
「偽物じゃなくて本物の婚約者になって俺と結婚するのはどう?」
「えっ……」
俺を見つめ返す美羽の瞳に動揺の色が浮かぶ。
俺としてはこのまま終わりにはしたくない。また美羽とやり直したい。彼女がそれを受け入れてくれるのなら。
「冗談やめてよ。私の役目は今日でおしまい。そういう約束でしょ」
美羽の視線が俺から逸れた。
彼女が素早くうしろに身を引いたことで、頬に触れていた俺の手が自然と離れる。
「だからこれも返すね」
美羽が左手の薬指から指輪を抜き取る。無理やり手渡され、受け取った。
やはりこれが現実だ。
美羽にはもう俺への気持ちなんて残っていない。俺が頼んだから、優しい彼女は同情の気持ちで婚約者のふりを受け入れてくれただけだ。
「悠翔の力になることができてよかった。今の部隊で頑張ってね。応援してる」
にこっと笑う美羽を抱き締めて、今も好きだと正直に想いを伝えたい。
でもきっと俺の気持ちは美羽を困らせる。
それに俺は一度プロポーズを断られているんだ。彼女の一番大切な存在はきっと今も変わらず弟の羽琉なのだろう。
美羽には伝えていないが、彼女の指につけた婚約指輪は今日のために用意したものではない。
三年前のプロポーズのときに渡すはずだった指輪を捨てられずに今日まで取っておいた。