悪女の涙は透明らしい
私と男のやり取りを端で見守っていた康二さんが「え、2人とも知り合いだったんだ」と何故か嬉しそうな笑みを浮かべてこちらを見る。
「なんだよチカ、いつの間に知り合ったんだ」
「「昨日」」
見事なまでのハモリ…。可笑しそうに笑う康二さんには悪いが、あまり良い気はしない。
「ごめん康二さん。私帰るね」
「え、もういいの?」
「うん。ご馳走様」
にこりと微笑んで会計を済ませるとそのままお店を出た。
いつもなら日が沈みかけるまで店内で過ごす穏やかでリラックス出来る空間も、今日は居心地が悪い。
あのチカって人がいると、私の居場所が消えたみたいだ。
家までの帰路を歩きながら、段々と自分の歩幅が狭くなっていくのを感じる。一歩、一歩、…やがて立ち止まりかけた矢先────
「お前が "白狐の姫" か」
「……誰、あなた達」
ゾロゾロとどこからか現れた黒服の集団たちが行く手を塞ぐ。