悪女の涙は透明らしい

黒装束に背中の蠍のロゴ、腕や頬、衣服の隙間から肌に刻まれた蠍の尾のような刺繍が見えた。


「なぁに、そんな怖い顔しなくても何もしねぇよ。大人しく俺たちと一緒に来てくれよ、高橋 奈緒ちゃん。」


集団のリーダー格のような体格の良い男が私に近づき意味深な笑みを浮かべる。

その上から下まで値踏みするような視線が無性に気持ち悪い。何より


「お生憎様、情報が古いわね。…私はもう白狐とはなんの関係もない」


私のことを「白狐の姫」だなんて言う奴、まだいたんだ。

こんな状況なのに、頭の中の冷静な自分が自虐じみたことばかり思い出させる。


『お前が俺たちを裏切ってたって、本当…?』


『なんでだよ奈緒っ!!ふざけんなよっ!』


『…花梨のことも、殺そうとしたのか?』





────嫌だ、思い出したくない…。

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