悪女の涙は透明らしい
そのまま暗い路地裏にジリジリと追い詰められ、やがて硬いコンクリート壁が背中に触れる。


「しかし白狐の奴らも勿体ないことするよなぁ。こんな美人、追い出すくらいなら俺達"蠍蛇"が貰ってやるのに」


蠍蛇。

確か暴走族の中でもとりわけ治安の悪い暴走族集団の一角で、覚せい剤や犯罪行為を繰り返すやばい連中の集まりだって聞いたことがある。


結局強いやつが権力を持つ暴走族の世界で、数少ない正統派の白狐とは違い、正反対の位置にいる蠍蛇の連中に守るモラルなんて、ない。

ギリっと掴まれた肩や腕が痛くて「…ッ」と痛みに顔をしかめる。

ああ、嫌だ。今日は本当にツイてな・・・・・



「その手離せよ」


次の瞬間、視界いっぱいに迫ってきていた目の前の男が勢いよく横に吹っ飛んだ。
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