悪女の涙は透明らしい
目の前でヒラヒラと手に持った学生証を見せてチカが二ヒッと笑った。

その屈託のない笑みが余裕気に私を見返したあと、次の瞬間には背を向けて立ち上がる。


「───で。あんたら集団でこんなとこに女連れ込んで何する気だったわけ?・・・・・覚悟出来てんだろうな」


低く、威圧するような声に周辺の男達がゴクリと唾を飲み込んだ。

先程リーダー格の“増田”と呼ばれていた男が一発でノされたことで、男たちが「くそっ、覚えてやがれ」とどっかで聞いたことある捨て台詞を零しながら去っていくのに時間はかからなかった。

路地裏に私とチカの2人だけが取り残される。


「ま、帰るか。」

「・・・・・。」


ガシガシと頭をかきながら帰る動作を見せるチカの腕の裾を小さく掴んで引き止める。
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