悪女の涙は透明らしい
「日頃から敵が多いからね。いつもはもっと上手く逃げてるよ。私ってほら、意外とこの辺りじゃ有名人だからさ」


私が暴走族の元姫だってことは、濁した。そこまで伝える必要は無いし、伝えたくない。



「なんで笑えんの」

「え?」


小さく呟かれた声にキョトンとしていると、次の瞬間頭をぐりぐりと撫でられた。


「わ、ちょ、なに…」

「次なんかあった時はすぐに俺を呼べ。」

「えっ、」

「大声で呼べばいつでも飛んでいくからよ」


「そんな漫画じゃないんだから」


にししっと笑うチカの顔を見ていると何だかこちらまで安心してくる。


「…ありがと。」

「おう」


チカはそのまま私がマンションの奥に入るのを見届けると先程の道を帰って行った。

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