悪女の涙は透明らしい


ガラッ…

教室の扉を開けて中に入ると、廊下で浴びてきた視線と同じ冷めた空気。


窓際の1番端にある自分の机に向かうと、真っ赤な色で大きく書かれた『悪女』の文字が視界に写る。


…油性ペンで描かれた文字は結局消せなかった。


「ねえ高橋さん」


クラスの中心にいた輪の中から、茶色の巻き髪の女が香水の匂いを漂わせながら近づいてくる。

「…なに」

「どんな気分なの?皆に白い目で見られるのって」


さも愉快そうに悦に浸る人間はどこにでもいる。
けど、当事者でもない人間にバカにされてやるほど私はできた人間じゃないから



「そうね。動物園に放り込まれた気分よ。皆毛並みの違う生き物が珍しいみたい」


目の前の女を一瞥した後、すぐに視線は窓の外へと向かう。


あ、今日快晴だ…

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