悪女の涙は透明らしい
「今日の新作はミルクティーだよ」
「美味しそうだね、それ飲みたいな」
「りょーかい。すぐ淹れるからいつもの席で待ってて。」
「ありがとう」
ふっと自然に笑みを零しながらいつもの窓際の木製の机に腰掛けると、淡い夕暮れに染る海が一望できる。
遠くに見える堤防の上の男女が仲睦まじげに2人で腰掛けて話しているのが見える。
その楽しげな様子をぼーっと見つめながら机に頬ずえをつくこと数分後、ほのかな甘い香りを漂わせて康二さんが盆に乗ったカップを運んでくる。
「お待たせ致しました。熱いから気をつけてね」
「…いい匂い。いただきます」
少しずつ、けれど確実に冬に近づいていくこの季節が好きだった。
一口、熱い湯気に一息ついて
二口目、甘くて優しい味に顔が綻んで
「────へえ。お前そんな顔も出来るんじゃん」
………思わず折角康二さんがいれてくれたミルクティーを吹き出すところだった。