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わたしがボートへ飛び乗ろうとすると、昴くんがそれを止めた。


「お待ちください、アリス様」


そう言って先に昴くんがボートへ乗ると、わたしに手を差し伸べた。


「どうぞ」


その手の上に自分の手を添えると、昴くんはそっとわたしを引き寄せた。

わたしは昴くんに導かれるようにしてボートの上へ。


スケッチブックを胸に抱いたわたしの向かいに昴くんが腰を下ろす。


「それではいきますよ」


わたしがこくんとうなずくと、昴くんがオールを持って漕ぎ始めた。


水面を滑るようにして進むボート。

心地いい水音を聞きながら、やわらい風が吹き抜ける。


「この辺りでいかがでしょうか?」

「うん、いいね」


昴くんがボートを止めてくれて、わたしはそこでスケッチを始めた。


すぐそばには、昨日わたしにキス――いや、人工呼吸をしてくれた昴くんがいる。
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