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だから、選ぶに選べなかった。


わたしは試着室の壁のフックにハンガーでかけた両方のワンピースに目を向けていた。


――そのとき。

横目に試着室のカーテンが揺れるのが見えた。


一瞬気にはなったけど、外から人の声も聞こえるし、その人が横を通ったときにたまたまこの試着室のカーテンに触れただけかもしれない。

そう思って、わたしはあまり深くは考えなかった。


さて、どちらのワンピースにするかを考えないと――。


「そんなに悩むなら、どっちも買ったら?」


ふと聞こえたそんな言葉。


「ダメだよ。さっきのお店でもトップスを買ってもらったから、ここは1着に絞らないと…」

「だったら、アタシが2つとも買ってあげようか?」

「え?2つとも…?」


とつぶやいて、はっとした。


なんと、姿見の中にもう1人のわたしが映っている…!
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