神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「……何コレ。こわいんだけど」
まるで見えない誰かに右手を固定されたかのように、美穂は筆を持つことが精一杯で、セキコの名を書くことができない。
「……やっぱり。愁月の“呪”に、そんな手抜かりがあるはずないのよね。
“神獣”に真名を伝えることは、“花嫁”が“神力”を得るための試練のようなものだから」
「は?」
美穂の眉間にしわが寄る。
初めから分かりきった答えを確認したような口調と『試練』という単語に、不快感が募った。
「バカにしてんの? 口に出さないでどうやって『伝える』んだよ?
だいたい、試練とか“花嫁”とかイミ解んない! あたしは好きでこんな所に来たわけじゃないのに!」
「……座って。
アンタだけに無理難題を押しつけるような言い方になったのは、謝るわ。真名に関してはアタシたちの問題でもあるんだから。
それと。
いきなりこんな所に喚ばれて、アタシの“花嫁”にされてしまったことは」
興奮して立ち上がった美穂をなだめ、穏やかに話していたセキコの声が、そこで一段低い音で、響く。
「謝らないわよ。
アンタがアタシに必要だから、アンタはこの世界に“召喚”されたんだし」
まるで見えない誰かに右手を固定されたかのように、美穂は筆を持つことが精一杯で、セキコの名を書くことができない。
「……やっぱり。愁月の“呪”に、そんな手抜かりがあるはずないのよね。
“神獣”に真名を伝えることは、“花嫁”が“神力”を得るための試練のようなものだから」
「は?」
美穂の眉間にしわが寄る。
初めから分かりきった答えを確認したような口調と『試練』という単語に、不快感が募った。
「バカにしてんの? 口に出さないでどうやって『伝える』んだよ?
だいたい、試練とか“花嫁”とかイミ解んない! あたしは好きでこんな所に来たわけじゃないのに!」
「……座って。
アンタだけに無理難題を押しつけるような言い方になったのは、謝るわ。真名に関してはアタシたちの問題でもあるんだから。
それと。
いきなりこんな所に喚ばれて、アタシの“花嫁”にされてしまったことは」
興奮して立ち上がった美穂をなだめ、穏やかに話していたセキコの声が、そこで一段低い音で、響く。
「謝らないわよ。
アンタがアタシに必要だから、アンタはこの世界に“召喚”されたんだし」