神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
瞬間、サァーッ……と、木々を揺らし冷たい風が吹き抜けていった。
風が吹いてきた方向へ、なんとはなしに歩いて行く。
「あ……」
透明な水の流れる、沢があった。
木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりとせせらぎが響くだけの空間。
「気持ち、いい……」
水温は低いようで、屋敷から裸足で歩いてきた足を冷やすには、ちょうど良かった。
岩場に腰を下ろし、目を閉じて顔を上げた。
なぜだか、祖父母の家で暮らした夏の感覚がよみがえってくる。
───自由ではあったが、孤独ではなかった。あるがままの美穂を、受け入れてくれたふたり。
「帰りたいな……」
自然とこぼれ落ちた本音。
十七年間暮らした世界へ、ではない。あの頃に、帰りたかった。
その時、かさりと枯れ葉を踏むような音がした。
美穂は、あの『男オンナ』が自分を迎えに来たのだと思い、キッとそちらをにらみつけた。
「“召喚”相手間違えましたって、いまさら謝ったって遅───」
言いかけた美穂の目に映ったのは。
「…………サル?」
風が吹いてきた方向へ、なんとはなしに歩いて行く。
「あ……」
透明な水の流れる、沢があった。
木漏れ日が差し込み、鳥のさえずりとせせらぎが響くだけの空間。
「気持ち、いい……」
水温は低いようで、屋敷から裸足で歩いてきた足を冷やすには、ちょうど良かった。
岩場に腰を下ろし、目を閉じて顔を上げた。
なぜだか、祖父母の家で暮らした夏の感覚がよみがえってくる。
───自由ではあったが、孤独ではなかった。あるがままの美穂を、受け入れてくれたふたり。
「帰りたいな……」
自然とこぼれ落ちた本音。
十七年間暮らした世界へ、ではない。あの頃に、帰りたかった。
その時、かさりと枯れ葉を踏むような音がした。
美穂は、あの『男オンナ』が自分を迎えに来たのだと思い、キッとそちらをにらみつけた。
「“召喚”相手間違えましたって、いまさら謝ったって遅───」
言いかけた美穂の目に映ったのは。
「…………サル?」