神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「はっ。お、お初にお目にかかりやす、あっしは猿助(さるすけ)と申しやす。
セキ様にお仕えしてからというもの、いつ“(つい)(かた)”様にお会いできるのかと、思い描いて幾星霜。
ゆうべ滞りなく儀式を終えられたと聞き、ホッとした次第でござんす。
であるにも関わらず、美穂様にごあいさつが遅れたこと、面目もございやせん!
しかしながら、あっしもセキ様も、美穂様がいらしたことにはいたく感激しており───」

「話、長っ! しかもしゃべれるとか!
……って、他にも突っ込みたいトコだけど、まぁいいや。ここ、いろいろヘンな世界みたいだし。
で、あたしになんの用なワケ? つか、なんでそんなに隠れてんの?」

木の幹の陰から、顔だけのぞかせたニホンザル。
機関銃のごとき話しっぷりに、美穂はそこでようやく口をはさんだ。

「……あ、あっしのことは、恐ろしくないんですかい?」

おそるおそるといった様子で姿を現した猿助は、赤い法被(はっぴ)を着ていた。
美穂を見ながら、前足の指先を落ち着きなく絡ませている。

「なにあんた、あたしのこと襲うつもり? 喰っても美味くないよ、あたし」
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