神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
美穂の言葉に、教室内がしんと静まりかえった。
「あ、えーと。じゃ、後でみんなにもメール送信しとくね。
それで、豊田さんのメアド教えてもらってもいい? あ、まだポケベルかな?」
邪気のない口調に、なぜ彼女が『質問者』に選ばれたのかが容易に想像がついた。
この時代、日本は『中流家庭』という、貧しくもなく、かと言って豪邸に住むわけでもない人々であふれている。
女子高生である美穂が、彼女たちの当たり前のツールである携帯通信機器を持っていないわけがないと、思っているのだ。
彼女はいわば、この社会全体の『空気』をまとっていた。
日本に、食うに困る貧しい者など、存在しない。それは、自分たちに縁のない外国のこと。
(……はいはい。幸せそうで何より)
卑屈であることは重々承知の上だ。
美穂は、周りからは『天然』と称されているだろう彼女の顔が、どうゆがむのかを想像しながら応えた。
「あたし、携帯電話もポケットベルも、もちろんパソコンも、持ってないよ。
両親死んで叔母んトコに居候してるから、万が一の連絡先はそこの家の電話でよろしく」
「あ、えーと。じゃ、後でみんなにもメール送信しとくね。
それで、豊田さんのメアド教えてもらってもいい? あ、まだポケベルかな?」
邪気のない口調に、なぜ彼女が『質問者』に選ばれたのかが容易に想像がついた。
この時代、日本は『中流家庭』という、貧しくもなく、かと言って豪邸に住むわけでもない人々であふれている。
女子高生である美穂が、彼女たちの当たり前のツールである携帯通信機器を持っていないわけがないと、思っているのだ。
彼女はいわば、この社会全体の『空気』をまとっていた。
日本に、食うに困る貧しい者など、存在しない。それは、自分たちに縁のない外国のこと。
(……はいはい。幸せそうで何より)
卑屈であることは重々承知の上だ。
美穂は、周りからは『天然』と称されているだろう彼女の顔が、どうゆがむのかを想像しながら応えた。
「あたし、携帯電話もポケットベルも、もちろんパソコンも、持ってないよ。
両親死んで叔母んトコに居候してるから、万が一の連絡先はそこの家の電話でよろしく」