神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「……お目覚め? ご機嫌ナナメのお姫様?」
からかうような口調は、聞き覚えのある男のもの───セキコのつややかな声音だった。
ささやき声なのは、寝起きの美穂を驚かせないためだと、解ってしまう自分が口惜しい。
「……なんであたしここにいるの?」
薄暗い部屋の様子から、時刻は夕方くらいだろうと思われた。
天井も障子も、昨晩に見たものと同じ。ここは、美穂に宛てがわれた部屋だ。
「ゆうべ、よく眠れなかったのね。猿助と話しているうちに寝ちゃったらしいわ。
……そのまま外で、寝かしておこうかとも思ったけど」
言外に、彼が美穂をここまで運んできたのだと窺わせる。
美穂はムッとしながら上体を起こした。
「じゃあ、放っておけば良かったじゃん! サルなんか見張りにつけて!
どうせあたしは、間違って“召喚”されたんでしょ? 元の世界には、いつ戻れるんだよ!」
いら立ちまぎれに片手を布団に叩きつける。
美穂自身、何にこんなに腹を立てているのか分からなかった。
ため息混じりに、セキコが言った。
「……アンタ、“花嫁”って言葉の意味、知らないの?」
からかうような口調は、聞き覚えのある男のもの───セキコのつややかな声音だった。
ささやき声なのは、寝起きの美穂を驚かせないためだと、解ってしまう自分が口惜しい。
「……なんであたしここにいるの?」
薄暗い部屋の様子から、時刻は夕方くらいだろうと思われた。
天井も障子も、昨晩に見たものと同じ。ここは、美穂に宛てがわれた部屋だ。
「ゆうべ、よく眠れなかったのね。猿助と話しているうちに寝ちゃったらしいわ。
……そのまま外で、寝かしておこうかとも思ったけど」
言外に、彼が美穂をここまで運んできたのだと窺わせる。
美穂はムッとしながら上体を起こした。
「じゃあ、放っておけば良かったじゃん! サルなんか見張りにつけて!
どうせあたしは、間違って“召喚”されたんでしょ? 元の世界には、いつ戻れるんだよ!」
いら立ちまぎれに片手を布団に叩きつける。
美穂自身、何にこんなに腹を立てているのか分からなかった。
ため息混じりに、セキコが言った。
「……アンタ、“花嫁”って言葉の意味、知らないの?」