神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「……二十一年経つわ、生まれてから」
「ふーん。あんたの場合は、外見のほうが老けてるワケね。
……ホント、ここって変な世界」

ひざをかかえた美穂は、ふたたび片頬づえをつく。隣で、セキコが身じろいだ。

「髪、触れてもいい?」
「は?」
「動かないで」
「えっ、ちょっと……!」

自分のほうに身を乗り出してきたセキコに、美穂は思わずのけぞった。
大きな手のひらが追いかけてきて、美穂の髪を()くようになでる。

半眼に伏せられた長いまつ毛と通った鼻筋。形の良い唇が近づいて、美穂の胸の鼓動をいやが上にも高鳴らせた。

「や、やだ……!」

気持ち悪いとか、怖いとか。そういう類いの『拒絶』ではない。

だからこそ美穂は、自分の感情にとまどった。
あえて表すなら、それは、恥じらいというものだ。

「……コクのじい様に、聞いたでしょ? “神籍”にあるとはいえ、病にもなるってこと」

するりと離れていく、セキコの手のひらと身体。代わりに告げられる言葉に、理解が追いつかない。

「……なに言ってんの、あんた」
「なにって……ちょっとヤダ、あのジジイ、きちんと説明しなかったの?」
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