神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜





前回とは違い、美穂は菊に用意された木の(くつ)を履き、とぼとぼと山道を歩いていた。

(あたしいつから『構ってちゃん』になったんだろう)

セキコの気を惹くような行動を取りながらも、わずらわしいと拒絶し、それ以上踏み込まれないことに、寂しさを感じる。

(学校でも家でも、構われるのが嫌だったのに)

両親のいない可哀想な子。付き合いも悪く、無愛想で取っ付きにくい───それが、学校での美穂の評価。
養ってやってるのに、可愛いげがない。厄介者───それが、叔母の家での美穂の評価。

(あたしの居場所なんて、どこにもない)

積極的に『死ぬ』ことなんて、できなかった。けれども、消極的に『死んでもいい』と考えていた。
そして、階段から落ちて───“陽ノ元”という世界で『生きている』自分を感じた時。
美穂は、新しい自分に、生まれ変わったような気がした。

(……そんな都合のいいこと、あるわけないのに)

力なく、笑う。
求めていたのは、自分のほうだったのだ。

『これに着替えて。外で待っているわ』

セキコの言葉が美穂のなかでよみがえる。
待っている───他の、誰でもない、自分を。
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