神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「え? え? 何? なんかここに、あるの?」

訴えかけるような目線を向けられた美穂は、手にした木沓で獣が示した場所を掘ってみる。
象牙色の紙片が出てきた。

「なにコレ……和紙?」

美穂は、土まみれになった縦長のそれを取り上げて目をこらす。
和紙には何やら文字が書かれていた。

「封……呪……?」

首をかしげていると、横から紙が引きちぎられた。
金茶色の獣が、切れ端を口にくわえている。

「は……?」
『───助かった』

透明な声音が、美穂の脳内で響く。
セキコが赤褐色の虎に変わった時に聞こえたのと、同じ感覚。

ちぎれた和紙を手にあ然とする美穂の前で、獣が金茶色の煙の筋に変わった。
うずまいて高く立ちのぼると、やがてそれは人の形を成していく。

「は? ちょっ……まさか!」

気づいた時は、もう遅い。
美穂は、己の勘の無さと人の話を理解する力の無さを痛感する。

「娘、礼を言う。このような所を訪れる者など、ないと思っていたが」

さらりと流れる金色に輝く長い髪。
金茶色をした切れ長の眼が、美穂を見下ろす。
白装束をまとってはいるが、これは『人』ではないだろう。
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