神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
菊の言葉に素直に従い、用意された衣にそでを通す。
いささか歩くのに不便ではあるが外に出たいという気分ではなかったので、美穂はそのままズルズルと着物のすそをひきずり廊下を歩く。
「不恰好ねぇ」
あきれた調子の男の声が、後ろからした。
そのひとことは、何も感じないはずの美穂の心に、楔を打ち込む。
「……なに」
「みっともないって言ってるの。
アンタちっさいんだから、打ち掛け羽織んなくていいわよ。
───ちょっと、菊! なにこのコに着させてんの?」
自分と目の前にいる『男オンナ』の世話を担うという“花子”。菊の説明では、役職名らしい。
早い話が使用人なのだろうと、美穂は解釈した。
呼ばれてすぐにやって来た菊に女装いと女の口調で話す男は、美穂の着る物を仕立て直すよう、注文をつける。
承知いたしました、とだけ言って立ち去る菊を見送って、男が美穂に視線を戻した。
「じゃ、とりあえず、腹ごしらえね」
にっこりと微笑む。
黙っていれば文句なしの美青年だろうに、この残念な口調と装いはいかがなものだろうか。
いささか歩くのに不便ではあるが外に出たいという気分ではなかったので、美穂はそのままズルズルと着物のすそをひきずり廊下を歩く。
「不恰好ねぇ」
あきれた調子の男の声が、後ろからした。
そのひとことは、何も感じないはずの美穂の心に、楔を打ち込む。
「……なに」
「みっともないって言ってるの。
アンタちっさいんだから、打ち掛け羽織んなくていいわよ。
───ちょっと、菊! なにこのコに着させてんの?」
自分と目の前にいる『男オンナ』の世話を担うという“花子”。菊の説明では、役職名らしい。
早い話が使用人なのだろうと、美穂は解釈した。
呼ばれてすぐにやって来た菊に女装いと女の口調で話す男は、美穂の着る物を仕立て直すよう、注文をつける。
承知いたしました、とだけ言って立ち去る菊を見送って、男が美穂に視線を戻した。
「じゃ、とりあえず、腹ごしらえね」
にっこりと微笑む。
黙っていれば文句なしの美青年だろうに、この残念な口調と装いはいかがなものだろうか。