神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「───っていう考え方が一般的ね。だけど……美穂? 聞いてる?」
突然、話を向けられて、美穂はあわてて見入ってしまっていたセキコの指先から顔を上げる。
「き、聞いてる」
「……今日は、このくらいにしておきましょうか」
美穂の反応を見て、セキコは苦笑する。集中力の切れやすい美穂を知っているからだ。
部屋に散らかった和紙や使った筆記具を片付けるように菊に言い置いて、セキコは腰を上げた。
「濡れ縁に出て待ってて」と、美穂に言い残して。
庭にある樫の枝葉がさわさわと揺れている。
適度にさえぎられた陽の光が、濡れ縁で影と踊っていた。
美穂は両足を投げ出して、後ろに両手をつき顔を上げ、目を閉じる。
セミの鳴き声が、うるさいほどに辺りに響いていた。
「お待たせ」
衣ずれの音と共に聞こえた声に目を開けると、手桶を持ったセキコが、美穂の側に腰を下ろすところだった。
「コクのじい様からお裾分けされたの」
桶には水に浸された桃が入っている。特有の甘い香りがふわっとただよってきた。
「……この世界に居るって決めた、あんたにって」
突然、話を向けられて、美穂はあわてて見入ってしまっていたセキコの指先から顔を上げる。
「き、聞いてる」
「……今日は、このくらいにしておきましょうか」
美穂の反応を見て、セキコは苦笑する。集中力の切れやすい美穂を知っているからだ。
部屋に散らかった和紙や使った筆記具を片付けるように菊に言い置いて、セキコは腰を上げた。
「濡れ縁に出て待ってて」と、美穂に言い残して。
庭にある樫の枝葉がさわさわと揺れている。
適度にさえぎられた陽の光が、濡れ縁で影と踊っていた。
美穂は両足を投げ出して、後ろに両手をつき顔を上げ、目を閉じる。
セミの鳴き声が、うるさいほどに辺りに響いていた。
「お待たせ」
衣ずれの音と共に聞こえた声に目を開けると、手桶を持ったセキコが、美穂の側に腰を下ろすところだった。
「コクのじい様からお裾分けされたの」
桶には水に浸された桃が入っている。特有の甘い香りがふわっとただよってきた。
「……この世界に居るって決めた、あんたにって」