神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
(こ、こいつ、いまあたしにキスしやがった!)

なんの前触れもなく、もののついでのように押し当てられた唇。

美穂は、怒りと恥ずかしさがない交ぜになり、思いきりセキコをにらむ。

「お前、いきなりナニしてんだよ?」
「あら、嫌だったの?」
「は? イヤとかそういう問題じゃなくて───」

悪びれた様子もなくセキコに問い返され、美穂は勢いに任せて言いかけたことの結論に、口を閉ざす。

(……あたし、なんで怒ってるんだろ)

嫌、ではなかった。
それならなぜ、こんなに気分がモヤモヤとしているのだろう?

(くやしいけど、あたしはこいつのことが好き)

自覚して、本人にも想いを伝えた。
けれども───。

美穂は、セキコから視線を外す。直視して訊くには、勇気がいったからだ。

「お前さ……あたしのこと……き、なの?」
「え?」
「だから! あたしのこと好きなのかって訊いてんの!」

結局、ケンカ腰の言い方しかできない自分は、可愛いげの欠片もない。
解っていても、長年染み付いた性格は、簡単には変えられなかった。

(…………って、返事、しろよ)
< 55 / 66 >

この作品をシェア

pagetop