神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
ぼそっとこぼし、美穂はあらぬ方向を見やる。すると前方で、含み笑いが聞こえた。
「あら、妬いてるの? 単純に、召喚された年齢の違いよ?
アンタと違って咲耶は、分別がつかなきゃおかしい歳だった、ダ・ケ」
鼻先をつつかれて、美穂は脱線した自分に気づかされる。
この男の前では、すぐに拗ねてヘソを曲げてしまう。……悪癖だ。
早く歩けよ、と、その背中を押しやり、美穂は話を軌道修正する。
「じゃなくて。
咲耶は親や兄弟がアッチにいてさ……愛されて、大事にされて育ったっぽいじゃん?」
また、自分とは違って、と付け加えそうになったが、今度は拗ねた言葉はのみこんだ。
「それなのに……戻って来たんだなあって、思って」
美穂は『あの世界』に居場所がなかった。だから、迷いは一切なかった。
むしろ───。
「そうね。その辺りはアタシたちには想像し難いけど」
そう言って足を止め、美穂を振り返る青年がいたからこそ。
美穂は『この世界』にいる自分が、まんざらでもないと思えるようになった。
「……アンタも、ちゃんと愛されて育った子でしょ? だから、大切な『賜り物』として、アタシは扱ってきたつもりだけど?」
「あら、妬いてるの? 単純に、召喚された年齢の違いよ?
アンタと違って咲耶は、分別がつかなきゃおかしい歳だった、ダ・ケ」
鼻先をつつかれて、美穂は脱線した自分に気づかされる。
この男の前では、すぐに拗ねてヘソを曲げてしまう。……悪癖だ。
早く歩けよ、と、その背中を押しやり、美穂は話を軌道修正する。
「じゃなくて。
咲耶は親や兄弟がアッチにいてさ……愛されて、大事にされて育ったっぽいじゃん?」
また、自分とは違って、と付け加えそうになったが、今度は拗ねた言葉はのみこんだ。
「それなのに……戻って来たんだなあって、思って」
美穂は『あの世界』に居場所がなかった。だから、迷いは一切なかった。
むしろ───。
「そうね。その辺りはアタシたちには想像し難いけど」
そう言って足を止め、美穂を振り返る青年がいたからこそ。
美穂は『この世界』にいる自分が、まんざらでもないと思えるようになった。
「……アンタも、ちゃんと愛されて育った子でしょ? だから、大切な『賜り物』として、アタシは扱ってきたつもりだけど?」