神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「アタシの『心』を自由にしてくれるのは、やっぱり、アンタだけ」

ついばむようなくちづけが落とされ、吐息が頬をかすめる。

「まぁ、アンタが『格好良い』って思ってくれるなら、こんな肩が凝る格好もたまにはしてもいいケド」

言った唇が首筋に触れる。
美穂が事の次第に気づいた瞬間、わざとらしい空咳が聞こえた。

「お、おそれながら、ハク様方にご招待された刻限はとうに過ぎておりやす。
先方では、セキ様方はどうした、まだか、との騒ぎになってるでござんすが、いかがされ───」
「あらヤダ、この野暮ザル」

恐縮しつつ木陰からニホンザルが顔をだし、ペラペラと話すのを、のんきな女の口調が止めた。

「“主”のイイトコ邪魔して、いったいどういうつもり?」

美穂は、目の前にある男の横っ面を軽くひっぱたいた。

「どういうつもり、は、お前だバカ」

言い捨てたのち、おしゃべりな“眷属”へと向き直った。

「猿助、いいところに来たね。咲耶たちに遅れるって言っといてくれる?」
「はっ、承知いたしやした!」

勢いよく返事をした“眷属”が煙に変わり、消え去る。
それを見届け、美穂はため息をついた。
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