神獣の花嫁〜さだめられし出逢い〜
「……って。いつの間にか、真っ暗になってんだけど」
気づけば陽はとうに落ちていて、夜の闇が辺りを覆っていた。
美穂にはたかれた頬をなでつつ、男がちょっと笑う。
「じゃ、歩くの止める?」
言外に『瞬間移動』で咲耶たちの屋敷まで行くことを勧められるも、美穂はつんと横を向く。
「あと少しで着くってさっき言ってたじゃん。ほら、案内しろよ」
あごをしゃくってうながすと、片手が差し出された。
「はい。お手をどうぞ、お姫様?」
向けられる眼差しと声が、甘く誘う。
薄暗いなかでも華やいだ空気をまとう男に、美穂は照れくささのあまり、衣の下に手を隠すようにして歩きだす。
「こっち? こっちの方向に行けばいい───」
踏み出した足が、不自然に、曲がる。
地面だと思った先には大きめの石があり、足首をひねってしまったのだ。
「……った……!」
「もうっ、仕様の無い子ね!」
転びかけた美穂を支えた腕の持ち主が、そのまま美穂を抱え上げた。
「ちょっと!」
「文句は自分の馬鹿さかげんに言いなさい」
ぴしゃりと切り捨てられ、美穂は反論する気力を奪われる。代わりに、なんだか情けない心地になってしまった。
気づけば陽はとうに落ちていて、夜の闇が辺りを覆っていた。
美穂にはたかれた頬をなでつつ、男がちょっと笑う。
「じゃ、歩くの止める?」
言外に『瞬間移動』で咲耶たちの屋敷まで行くことを勧められるも、美穂はつんと横を向く。
「あと少しで着くってさっき言ってたじゃん。ほら、案内しろよ」
あごをしゃくってうながすと、片手が差し出された。
「はい。お手をどうぞ、お姫様?」
向けられる眼差しと声が、甘く誘う。
薄暗いなかでも華やいだ空気をまとう男に、美穂は照れくささのあまり、衣の下に手を隠すようにして歩きだす。
「こっち? こっちの方向に行けばいい───」
踏み出した足が、不自然に、曲がる。
地面だと思った先には大きめの石があり、足首をひねってしまったのだ。
「……った……!」
「もうっ、仕様の無い子ね!」
転びかけた美穂を支えた腕の持ち主が、そのまま美穂を抱え上げた。
「ちょっと!」
「文句は自分の馬鹿さかげんに言いなさい」
ぴしゃりと切り捨てられ、美穂は反論する気力を奪われる。代わりに、なんだか情けない心地になってしまった。