純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

初対面のはず


ここは居酒屋。

テーブルは4人掛け。 

週末ということもあって、店内はがやがやと賑やかだった。

友人の曳地(ひきち)かおりから、どうしてもと懇願されて断り切れなかった私は、飲み会という名の合コンに来ていた。我ながらお人好しだと思う。

今夜の合コンは、かおりが少し前の合コンで気に入ったらしい男性と、また会いたいがためにセッティングしたものだった。主役はあくまでかおりとその男性だ。

メンバーはそんな二人に加えて、私ともう一人の男性の合計4人。

傍から見ればダブルデートに見えないでもないが、私はこの飲み会に期待などしていなかった。そもそも、そんなに簡単に心惹かれる相手に巡り合えるわけはないと思っている。ロマンティックな出会いに憧れるほど、残念ながらピュアではない。

それにしても……。

私は隣に座るかおりの横顔をちらっと見た。

かおりは、気に入ったという彼――前田信也(まえだしんや)――と、もうすでに下の名前で呼び合っているようだった。そこまで仲良くなっているのなら、わざわざこんな飲み会を設けなくても良かったんじゃないのか。

ちょっぴり苦々しく思いながら、私は目の前に座る人物をちらっと見た。前田の友達だという大柄な男性だ。

彼が現れた時のことを思い出す。

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