純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む～

しるし

宗輔は私の肩に顎を乗せたままま、こう言った。

「年が明けたらできるだけ早く、佳奈のご両親に挨拶に行きたいな」

その言葉に早い展開が待っていそうな今後を想像して、私はうろたえる。

「え、もう……？」

「善は急げっていうじゃないか。うちの親父にも、早めに釘をさしておかないといけないからな」

「釘って？」

訊き返す私に、宗輔は苦笑を浮かべて見せる。

「佳奈も被害に遭わなかったか？親父からの見合い話」

「……あぁ……あれ、ね」

私もまた思い出して苦笑した。些細なことをきっかけにして、以来私を気に入ってくれているマルヨシの社長――宗輔の父は、何かとそういう話を私に持ってきてくれていた。気にかけて頂いていたのはありがたかったが、私の方にはそのつもりがなかったから、その度に断るのに苦労した。

「確かに社長にも、早くご挨拶に伺った方が絶対にいいわね」

年末年始、人脈豊富な社長のもとには千客万来、中にはおそらく見合い写真を手に訪ねて行く人もいるのではないかと想像できる。

「年明けは忙しくなりそうだな。――ところで。遅くなったけど、クリスマスプレゼントがあるんだ」

「私もね、ちょっとしたものなんだけど、プレゼントがあるの」

そう言いながら、私たちは互いにプレゼントを手元に用意する。

「宗輔さんの好みをまだよく知らなくて……。だから、気に入らなかったら処分してくれていいから」

私は彼にラッピングされた長方形の箱を差し出した。中身は革製の手袋だ。これくらいなら、日常使いできるんじゃないかとあれこれ迷って決めたものだった。

「ありがとう。大事に使うよ」

宗輔は早速手を入れて、嬉しそうに着け心地を確かめている。

「良かった。喜んでもらえた、のかな？」

「佳奈からのものは、なんでも嬉しいんだよ。――そしてこれは俺から。開けてみて」

宗輔は私の手を取り、手のひらの上に細いリボンが掛けられた小さなギフトボックスを乗せた。

――この大きさって……。

私はどきどきしながらそっとリボンを解き、ラッピングを丁寧に外した。現れた箱の中にはもう一つ小箱があった。取り出して蓋を開けて見ると、そこには銀色のやや太めのリングが収められていた。