純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

「これ……」

「ペアリング。自己満足なのは分かってるんだけど、俺のものっていう印をつけたくてさ。こういうの、嫌?」

私は首を横に振った。

「全然。嫌どころか、すごく嬉しい。――つけてもいい?」

「つけてやるよ」

宗輔は私の左手の薬指に、指輪を通した。

「ちょっと緩いみたいだな。年が明けたら直しに行こう」

「じゃあ、それまでは――中指ならちょうどいいから。ほらね」

そう言って宗輔に見せてから、私はおやっと思った。

「ペアリングなら、宗輔さんのは?」

宗輔はトレーナーの襟の中に手を入れると、チェーンに通したリングを取り出した。

「ここにある。佳奈がつけてくれたら、俺もつけようと思ってた。つけてくれる?」

宗輔はチェーンから外した、私のものよりも一回り程大きめのリングを私に渡した。

「なんだか結婚式の練習みたいね」

彼の薬指にリングを通しながら思わず口走り、私ははっとした。明らかにもう結婚を意識していることが伝わってしまった――そう思うと、少し恥ずかしい。

「婚約指輪飛ばして、結婚指輪、見に行ってもいいかもな」

くすっと笑う宗輔に、私は赤くなりながら小さく頷いた。

「どちらでも……。ただ」

私は口ごもった。

「うん、何?」

「これは、会う時につけるね。普段は、大事にしまっておくわ」

「やっぱりそう言うだろうと思った……。今は会社につけていけないよな」

宗輔は残念そうに小さく笑う。

大木のことを言っているとすぐに分かって、私はうつむいた。

「ごめんなさい……」

会社がアクセサリー禁止というわけではない。「私が」いきなり指輪をして行って、それが大木の目に止まれば非常に厄介なことになるーーそう予想がついた。

「謝らなくていい。俺が先走っただけだから。婚約指輪か結婚指輪を買うまで大事に持ってて。……ところでさ」

宗輔が私の耳元で囁くように言った。

「風呂、どうする?」

「あ……」

彼の声音ににじむ艶に、私の鼓動は高鳴った。

「一緒に、入ろうか」

そう言って宗輔は私の耳に口づける。

私の知る彼とは思えないような色っぽさに、くらくらしてしまう。思わず頷いてしまったのは、絶対にそのせいだ。
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