純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
宗輔は私の手を引き、リビングを出て浴室へと向かった。脱衣所の扉を開けると、ワゴンの中を目で示して言う。
「あそこに置いてあるタオルとかバスローブとか、佳奈用に買ったやつだから好きに使って。佳奈の荷物、こっちに持ってきた方がいいよな。ちょっと待ってて」
そう言ってリビングに戻った宗輔は、私の荷物を持って来てくれた。
本当に一緒に入るのかしら――。
過去につき合った人はいたけれど、一緒に入浴したことはない。どきどきしながら荷物を受け取り、私は彼の次の言葉を待った。ところが、「ごゆっくり」と言い残して、彼はリビングへ行ってしまった。
そうしたかったというわけではなかったが、肩透かしを喰ったような気になった。とは言え、いわゆる舞台裏を見られずに済んだことにほっとする。私は手荷物を開くと入浴に必要なあれこれを取り出して、浴室に足を踏み入れた。
洗い場もバスタブもゆったりとしていて、自分の部屋の浴室とは段違いの広さだった。
ここなら確かに二人で入っても余裕ね――。
ふとそんなことを思い、顔が熱くなる。
髪は持参していた自分用のシャンプーを使ったが、ボディシャンプーは宗輔のものを使わせてもらう。彼の手が触れるかもしれないことを意識してしまって、私はいつも以上に丁寧に全身を洗った。
浴室を出てから、宗輔が用意してくれたバスローブを着ようか迷ったが、結局持ってきたパジャマを着ることにした。その下には、この日のためにと買ったランジェリーを身に着ける。普段はつけない透け感あるレーシーなデザインを選んだのは、好きな人から少しでも綺麗に色っぽく見られたいと思う女心だ。気合が入っていると引かれやしないか、今さら心配になったが、私は意を決して宗輔が待っているであろうリビングに戻った。
「お風呂、ありがとう」
「ゆっくりできたか」
「えぇ。とっても広くて、手足を伸ばしてお風呂なんて、久しぶりだった」
「それなら、やっぱり俺も一緒に入れば良かったかな」
宗輔はにっと笑う。
「ま、また機会があればね……」
「俺も入って来る。佳奈は、こっち」
そう言うと、宗輔は私を促して別の部屋の前まで行くとドアを開けた。
「寝室。布団、温めておいて」
私の額にキスをすると、彼は浴室に向かった。