純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

私たちの支店は、県内のいわばベース店だった。それもあって、パーティーはこの街のホテルの会場を予約することになり、日程は二月中旬の金曜の夜と決まった。準備や接待については、私たちの支店と県内の他の支店とで手分けして行うことになった。

当日は、支店長はもちろん、私たちの支店を含む数県の支店をさらに上の方で管理する部長――本部長も招いてあった。さらに、代理店の世話役として、各支店からそれぞれ課長と主任クラスの営業職、加えて事務職も招集されることになった。私もそのうちの一人として、課長の大木、主任、久美子と共に参加することになった。

ホテルまで、私たちはタクシーに分乗して移動した。もちろん私は久美子と一緒だ。会場に到着すると全員で簡単な打ち合わせを行い、その後それぞれに割り当てられた係の仕事につく。

私と久美子は、並んで会場の受付に立った。

しばらくすると、小柄な女性が嬉しそうな様子でいそいそと近づいてきた。普段からやり取りの多い代理店のおばさまの一人だった。彼女は私たちの顔を見ると満面の笑みを浮かべた。

「あらあら、早瀬さんと北山さんじゃないの!知っている顔がいてくれて、とっても安心だわ!」

「川口さん、お疲れ様です。今日はお忙しい中ご参加頂きまして、ありがとうございます」

久美子と二人して頭を下げていると、さらによく知る人物が現われた。

「おや。今日は皆さん、ご苦労様ですね」

そう言って穏やかな笑顔を浮かべるのは、マルヨシの社長――宗輔の父だった。
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