純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
甘ったるい私たちのやり取りを、両親たちはにこにこと見守っている。そんな中、私の母が急に涙声となって言い出した。
「――宗輔さん、佳奈のこと、よろしくお願いします」
宗輔は母に向き直ると、表情を改めて力強く頷いた。
「はい。佳奈さんのことは幸せに、大事にしますから。安心してください」
「もう、お母さんったら。結婚式はまだ先よ。泣くのはその時まで待ってよ」
鼻の奥がつんとしそうになるのをごまかすように、私は明るい声を出した。
「あらやだ、そうよね。ごめんなさい」
撮影の準備を終えたカメラマンが、私たちを呼ぶ。
「すみません、お二人とも。そろそろ撮影始めてもいいですか?」
「は、はい」
「佳奈、手、貸して」
「ありがとう」
私は宗輔の手のひらに自分の手を重ねた。
そのまま彼に手を引かれて、カメラマンが指示した場所に二人して立つ。
「自由に動いて頂いて大丈夫ですからね」
「自由に、って……」
戸惑う私に宗輔はくすっと笑う。
「プロだから、なんとでもできるってことなんじゃないの?それなら……」
そう言うと、宗輔は私の額にキスをした。
「なっ、ちょっと!」
「カメラマンさん、今みたいな感じでもいいんですか?」
「はい!今の、すごくいい感じでしたよ!」
「……うそでしょ」
私は頬を熱くして、宗輔を見上げた。
「ほら、佳奈も俺にキスして」
「えっ!」
ギャラリーと化した親たちは、微笑ましいとでもいうような顔で、相変わらずにこにこと私たちを眺めていた。
隣を見れば、宗輔が私のキスを待っている。その目はまるでいたずらっ子のようだ。
私は可笑しくなって、くすくすと笑いながら彼の頬にキスをした。
カメラマンの声が聞こえた。
「今のもいいですね!普通に二人で並んでいるところも、後で何枚か撮らせてくださいねっ」
「普通にってどんなの?」
「さぁ?」
私と宗輔は手を取り合って、笑いながら顔を見合わせた。
「今の感じも素敵ですよ!」
カメラマンの明るい声が飛んできた。
こうして撮影は順調に終わった。
――そしてこの日、私は「高原佳奈」になった。