純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

甘ったるい私たちのやり取りを、両親たちはにこにこと見守っている。そんな中、私の母が急に涙声となって言い出した。

「――宗輔さん、佳奈のこと、よろしくお願いします」

宗輔は母に向き直ると、表情を改めて力強く頷いた。

「はい。佳奈さんのことは幸せに、大事にしますから。安心してください」

「もう、お母さんったら。結婚式はまだ先よ。泣くのはその時まで待ってよ」

鼻の奥がつんとしそうになるのをごまかすように、私は明るい声を出した。

「あらやだ、そうよね。ごめんなさい」

撮影の準備を終えたカメラマンが、私たちを呼ぶ。

「すみません、お二人とも。そろそろ撮影始めてもいいですか?」

「は、はい」

「佳奈、手、貸して」

「ありがとう」

私は宗輔の手のひらに自分の手を重ねた。

そのまま彼に手を引かれて、カメラマンが指示した場所に二人して立つ。

「自由に動いて頂いて大丈夫ですからね」

「自由に、って……」

戸惑う私に宗輔はくすっと笑う。

「プロだから、なんとでもできるってことなんじゃないの?それなら……」

そう言うと、宗輔は私の額にキスをした。

「なっ、ちょっと!」

「カメラマンさん、今みたいな感じでもいいんですか?」

「はい!今の、すごくいい感じでしたよ!」

「……うそでしょ」

私は頬を熱くして、宗輔を見上げた。

「ほら、佳奈も俺にキスして」

「えっ!」

ギャラリーと化した親たちは、微笑ましいとでもいうような顔で、相変わらずにこにこと私たちを眺めていた。

隣を見れば、宗輔が私のキスを待っている。その目はまるでいたずらっ子のようだ。

私は可笑しくなって、くすくすと笑いながら彼の頬にキスをした。

カメラマンの声が聞こえた。

「今のもいいですね!普通に二人で並んでいるところも、後で何枚か撮らせてくださいねっ」

「普通にってどんなの?」

「さぁ?」

私と宗輔は手を取り合って、笑いながら顔を見合わせた。

「今の感じも素敵ですよ!」

カメラマンの明るい声が飛んできた。

こうして撮影は順調に終わった。




――そしてこの日、私は「高原佳奈」になった。

< 137 / 138 >

この作品をシェア

pagetop