純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
「もちろん、そのつもりです。彼女を送ったら戻ってくるので、店で待っててくださいね。お礼させてください」
「お礼なんかいらないよ。それよりも、マスターには俺から言っておくから、早く送って行ってやりな」
彼は金子に向かって片手を上げてひらりと動かした。
「それじゃあ、お願いします。……佳奈ちゃん、行こう。送るよ」
「でも、金子君の仕事は?」
「もともと買い出しを頼まれて、出てきたところだったんだよ。マスターにはそうさんが事情を話してくれるっていうから大丈夫。だいだいさ、こんな時はマスターなら送って行けって言うに決まってるよ」
「それなら……。お願いします」
「うん。行こうか」
金子に促されて歩き出そうとして、私は足を止めた。ちょうど階段に足をかけるところだった「そうさん」の背中に向かって、私はもう一度心から礼を言った。
「助けて下さって、本当にありがとうございました」
「……どういたしまして」
「今度私がいる時にもいらして下さい。ぜひお礼させてください」
「気が向いたら」
彼はぶっきらぼうに答え、結局ただの一度も私と目を合わせることなく、階段を昇って行ってしまった。
私が田上の店のアルバイトをやめることにしたのは、その一件から割とすぐの翌週だった。
「お礼なんかいらないよ。それよりも、マスターには俺から言っておくから、早く送って行ってやりな」
彼は金子に向かって片手を上げてひらりと動かした。
「それじゃあ、お願いします。……佳奈ちゃん、行こう。送るよ」
「でも、金子君の仕事は?」
「もともと買い出しを頼まれて、出てきたところだったんだよ。マスターにはそうさんが事情を話してくれるっていうから大丈夫。だいだいさ、こんな時はマスターなら送って行けって言うに決まってるよ」
「それなら……。お願いします」
「うん。行こうか」
金子に促されて歩き出そうとして、私は足を止めた。ちょうど階段に足をかけるところだった「そうさん」の背中に向かって、私はもう一度心から礼を言った。
「助けて下さって、本当にありがとうございました」
「……どういたしまして」
「今度私がいる時にもいらして下さい。ぜひお礼させてください」
「気が向いたら」
彼はぶっきらぼうに答え、結局ただの一度も私と目を合わせることなく、階段を昇って行ってしまった。
私が田上の店のアルバイトをやめることにしたのは、その一件から割とすぐの翌週だった。