純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
仕方がない。少なくとも、この場はなんとかやり過ごそう。私は大人なのだ。自分で言うのもなんだが、コミュニケーション能力は高い方だと思う。そしてこの飲み会は、もとより私にとっては出会いの場でもなんでもない。そうだ、接待のようなものなのだ――。
私は自分を騙し、あるいは励ますかのように心の中で自分に言い聞かせると、笑顔を作った。
「今日はお休みだったんですか?」
私は意識的に声のトーンを少し上げて、高原に話しかけた。こうやって自分のテンションを上げないと、彼の負の空気に負けてしまいそうだったのだ。
彼がラフな服装をしていたから、そう訊ねてみた。初対面同士の会話の取っ掛かりとしては、悪くはなかったと思う。そして、「休みだった」とか、「実は休日出勤で」とか、いくら高原が無愛想であっても、少なくともそれくらいは普通に言葉を返してくれるだろうと思っていた。
しかし、それは私の思い込みだったようだ。
高原は不機嫌そうな顔をしたまま唇の端を歪めると、鼻先でふっと冷たく笑いながらこう返してきたのだ。
「だったら何?」
「えっ……」
私は鼻白んだ。笑顔が固まりかける。まさかそういう返し方をされるとは、微塵も思っていなかったのだ。