純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
同行
大宮に同行してマルヨシへ行く日、私は少し早めに昼食を取ると、社有車の助手席に乗り込んだ。運転は大宮だ。
車の中で、マルヨシに着いてからの段取りを確認し合う。
「……というわけで、今日は大口契約に向けての打ち合わせなわけだ」
私は軽く唸り声をあげる。
「やっぱり、私がいなくても大丈夫な案件ですよね」
「そんなことないよ。だって、特に事務に関する代理店からの問い合わせ対応って、早瀬さんたちがやってくれてるわけだから。正直言うとさ、俺一人でマルヨシさんに絡むのは心細かったんだ。だから助かる」
「またまたそんなこと言って。聞いてますよ?前にいた支店で、いくつも大口手掛けてたって」
大宮は前を見たままアハハと笑う。
「そうなんだけどね。それでもやっぱりさ、地元をよく知る人と一緒って言うのは心強いんだよ」
そんな話をしているうちに、目的の『マルヨシ不動産』の看板が見えてきた。
「それじゃ、早瀬さん、今日はサポートよろしくお願いします!」
「はい。頑張ります!」
大宮は建物の前にある駐車場に車を止めた。
車を降りた私たちは店舗に入ると、出迎えてくれた女性職員に用件を伝えた。
「お待ちしていました。どうぞご案内しますので」
そう言う彼女の後について、私たちは営業スペースを通り抜ける。
彼女はさらに奥にある部屋の前で足を止めると、ドアを軽くノックした。それから返事を待たずに、部屋の中に向かって声をかけながらドアを押し開いた。
「社長、お客様がいらっしゃいました」
「おぉ、わざわざ悪かったね」
社長と呼ばれた白髪の男性が、にこやかな顔で私たちを手招きした。