純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
「本日はお時間を割いて頂き……」
大宮がドアの所に立ったまま、挨拶の言葉を述べようとするのを、社長は止めた。
「まずは中に入りなさい。……おおっ、早瀬さん!」
大宮の後ろに私が控えていたことに気がついて、社長のにこやかな顔がさらに笑みを増したように見えた。
「よく来てくれた!すまなかったね、私のわがままで引っ張り出してしまって。しばらく顔を見ていなかったが、元気そうだね」
「はい、おかげさまで。いつも当社にお力添えを頂き、本当にありがとうございます」
そう言って私は頭を下げる。
「そんな堅苦しいのはいいから。ほら、大宮君が座らないと早瀬さんが座れないだろう」
「は、はい。では失礼します……」
大宮は困惑気味に、しかし営業スマイルは忘れることなく、勧められたソファに腰を下ろした。私もそれに倣って、大宮の隣に座る。
「さて、と。仕事の話に入ろうかね」
社長の方からそう言い出してくれたことに、大宮はほっとしたような顔をした。
「はい、では早速。早瀬さんは、設計システムを立ちあげておいてくれますか。あとでシミュレーション、お願いしたいので」
「はい、分かりました」
私は持参したノートパソコンを開いた。
話はスムーズに進み、予定していた時間よりも打ち合わせは早く終わった。
大宮と社長が今後の段取りを確認し合っているうちに、私は机の上に広げていた資料やパソコンを片づける。
「それではご契約日が決まりましたら、私が同行させて頂きますので、よろしくお願いいたします。また何かありましたら、いつでもご連絡下さい」
大宮はそう言うと、私を見た。帰るという合図だ。