純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
私は社長に頭を下げた。
「社長、本日はありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。それでは私共はこれで……」
そう言って立ち上がろうとした私たちを、社長が引き止めた。
「もう少しだけ、いいかな?実は相談があってね」
「相談、ですか?」
私は大宮と顔を見合わせた。
「実は息子がね、うちで働くことになったんだよ。それでさ、保険の方を任せたいと思ってるんだが、ほらなんて言ったかな、研修生だっけ?それで少し経験を積ませたいと思うんだ。どうだろう、大丈夫だろうかね」
「特に問題はないかと」
大宮が頷くのを見て、社長は安心したように口元を綻ばせた。
「そうか。それなら、早速そういう方向で話を進めてもらおうか」
「承知しました。戻り次第、準備に入らせていただきます」
「よろしく頼むよ。そうだ。先に息子に会っておいてもらおうか。その方が何かとスムースだろう。なんだったら、後は直接やり取りしてくれていい。逐一私を通すのも煩わしいだろうからね。……ちょっとだけ待っててくれるかな」
社長はそう言って立ち上がると、息子を呼びに部屋を出て行った。
社長たちを待つ間、私と大宮は小声で話していた。
「早瀬さんて、社長に気に入られてるんだね」
「気に入られてる、というか、何かと優しく接して頂いてはいますね」
初対面での私の対応が良かったのだと、当時の上司から後で聞かされた。それ以来マルヨシの社長は、私に対して好意を持って接してくれている。ありがたいことだ。