純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
しかし、私はその困惑をなんとか笑顔の下に隠した。助けを求めて隣のかおりをちらと見たが、すぐに諦める。
かおりは嬉しそうに前田を見つめながら、彼とのおしゃべりに夢中の様子だった。
邪魔、できないわね……。
私は内心苦笑したが、すぐに気を取り直す。にこやかな笑顔をできるだけ崩さないように気をつけながら、高原に話しかけるのを再開した。
「えぇと。ラフな格好をされているから、今日はお休みだったのかしらと思ったもので。それとも、休日出勤とかですか?」
高原の表情はまったく変わらなかった。舌打ちでも聞こえてきそうだ。
どうせなら楽しい時間を過ごした方がいいと、私はすでに割り切っている。しかし、高原もそうだとは限らないことに、思い至った。
最初から不機嫌そうな態度だったから、本当は来たくなかったのかもしれない。私と同じく前田から頼み込まれて、この飲み会に来ているだけなのかもしれない――そう思った。
けれど仮にそうだったとしても、場の空気を壊すような態度や言動は、大人としていかがなものか。
嫌ならもう帰ればいいのに、と思ってすぐに、自分自身のことを思い返した。私もそう思った。けれど結局、せめて時間いっぱいはここにいようと決めたのだった。
もしも、高原も私と同じように考えてここにいるのだとしたら、びっくりするほど無愛想で印象が最悪な人だとしても、少しはいい所があるのかもしれない……。