【2/1~加筆修正中】純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~
 白山神社はこの辺りでは大きな神社だ。一年を通して、何かしら祭りやイベントを行っている。今の時期は、そろそろ紅葉の季節ということで、境内の所々にライトアップが施されていた。
 高原は神社の敷地内にある駐車スペースに車を止めた。他に止まっている車はなく、境内を歩く人影もまばらだった。

「ここでいいのか」
「はい」

 私はシートベルを外して頭を下げた。

「送ってくださってありがとうございました。それから、食事もご馳走さまでした。私はこれで失礼します」

 車から降りようとドアに手をかけた時、高原が私を引き留めた。

「せっかくの神社だ。ちょっとお参りでもしていかないか?」
「え……?」

 私は戸惑った。彼は知らないのかもしれないが、ここは縁結びの神社である。

「ここまで来て素通りするなんて、神様に失礼だろ」
「それはそうかもしれませんけど……」

 私は高原の顔をまじまじと見つめた。ただでさえ読めない表情が、薄暗い中ますます読めない。

「どうして一緒に参拝しなければいけないのでしょうか」
「ん?逆にどうして一緒に参拝しちゃだめなんだ?」

 その声音にからかうような響きを感じ取る。もう何も言うまいと、私は力なく沈黙した。
 いずれにせよ、彼ははなから私の答えを待っていたわけではなかったのだろう。エンジンを止めてさっさと車を降り、助手席のドアを開けた。

「行ってみようか」
「はぁ……」

 気のない返事をして車から降りる。お参りしたらそのまま帰ってしまえばいいのだと考えながら、私は参道に向かう彼の後に続いた。
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