純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

会話にならない会話

普段から私は、できるだけ他人のいい面を見るように心がけているつもりだ。

しかし、高原については例外だった。そんな心がけも瞬時に忘れそうになった。

少しくらいはいい所があるのかもしれない――。

そう思ったのは、ほんの何秒か前のことだったが、それを撤回したくなるのは非常に早かった。

高原はわざとらしく大きなため息をついた。壁に寄りかかって頬杖をつき、面倒くさそうな顔つきで私をじっと見た。

「何をしてたか、とか、わざわざ言わないと駄目なわけ?」

「えっ、いや、その……」

私は口ごもった。

この人、いったいなんなんだろう。面倒くさいと思ってるのは私の方よ。話しかけるのをやめようか――。

そうは思ったものの、何かとっかかりはないかと、私は再び助けを求めるように、高原の友達である前田の方に目をやった。

前田は私の視線に気がついた。彼は私の視線の意味をすぐに悟ったらしく、隣の高原をちらりと見やった。ところが、前田は助け舟を出すわけでもなく、私に「ごめんね」とでも言いたげな苦笑を見せたきり、かおりとの会話に戻ってしまった。

あなたの友達でしょっ――。

そう言いたいのを飲み込んだら、口元がぴくりと引きつりそうになった。なんとか表情を取り繕い、一瞬忘れそうになった笑顔をなんとか取り戻す。いったいなんの苦行なのだろうと思いながら、私はぐっとお腹に力を入れると、高原との会話に再び挑んだ。

「えぇと、高原さんと前田さんは、お友達なんですよね?普段からよく一緒に飲んだりするんですか?」
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