【2/1~加筆修正中】純愛以上、溺愛以上〜無愛想から始まった社長令息の豹変愛は彼女を甘く包み込む~

14.急接近

 結局、アパートの前まで送ってもらった。
 車に乗ってからも場所をはっきりと言わない私に、高原はからかうように言ったのだ。

「俺が君を襲うとでも思ってるのか?早瀬さんって、けっこう自意識過剰なんだな」

 カチンとした私は、まるで乗せられてしまったかのようにアパートの場所を教えてしまった。
 この人といるとまったく調子が狂う。苛立ちを抑えながら私は彼に礼を言った。

「今日は、本当に、色々とありがとうございました」

 急いでシートベルトを外し、ドアを開けようとしてふと手を止める。大事なことを言い忘れるところだったと、私は高原に向き直った。

「あの、ですね」

 彼はハンドルに腕をかけて、フロントガラスの向こう側を眺めていたが、私の声に首を回す。

「何?」
「今後のことですが」

 私は舌先で唇を軽く湿らせ、仕事用の改まった口調で言った。

「今日は初回ということもあって私が対応いたしましたが、今後は何かあれば、まずは営業の大宮にご相談いただけますでしょうか。その方が話も早いですし、お互いのためにもその方がよろしいかと思います」
「お互いのためっていうのは、どういう意味?」

 高原が反応したのは、うっかり口を滑らせてしまった部分だった。聞き流してはくれなかったかと、彼の目を避けて私は答える。

「私以外の者が対応した方が、高原さんにとっても色々とやりやすいのではないか、という意味です」
「どうして?俺は早瀬さんに対応してほしいんだけど」
「それは、ですね……」
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